
前回の記事で、3Mは2018/2Q~2019年3Qの間に、業績が下落局面に入り、それに伴ってPERも剥落していき、
その後業績は改善方向に動いているものの、PERは元に戻らずで、現在の長期株価低迷を招いていることがわかりました。
それでは、2018/2Q~2019年3Qになぜ業績が悪化してしまったのか、そして、それがどのようにして投資家の3Mに対する将来の見方を変えてしまい、PER剥落に至ってしまったのかを次に見ていきます。
2018年3Qから2019年にかけての四半期決算ごとのカンファレンスコールをつぶさに見ていくと、その原因がわかります。
それは、中国向け販売の減速です。
3Mの売上に占める中国の比率は約30%を占めるので、中国の減速は大きな影響を与えます。
特に自動車の生産台数減に起因する3M製品の販売減や、エレクトロニクス系の販売減が響いたとのこと。
まず中国の名目GDPの推移を見てみます。
(単位: 10億USドル)
2016年:11,226.90(前年比+1.02%)
2017年:12,265.33(同+9.25%)
2018年:13,841.81(同+12.85%)
2019年:14,340.60(同+3.6%)
2020年:14,866.74(同+3.67%)
出典:世界経済のネタ帳
3Mの減速が明らかになる2019年1Qと歩調を合わせて中国経済が減速していることがわかります。
次に中国の自動車生産台数の推移は以下。
2016年:2,811万台(前年比+14.46%)
2017年:2,901万台(同+3.19%)
2018年:2,780万台(同-4.16%)
2019年:2,572万台(同-7.5%)
2020年:2,522万台(同-2.0%)
出典:MARKLINES
上記のように2017年をピークにその後は減少傾向にあります。
生産台数減の主要因は米中貿易摩擦、排ガス基準の切換、新エネルギー車補助金減額などの影響を受けたものとのことですが、中国経済の成熟化に伴い、販売台数が落ち着いてきたという背景もありそうです。
3Mは、自動車製造の家庭で必要な接着剤、テープ、フィルターなどの化学製品を販売しております。
2000年代や、2010年代前半はまさに中国経済が世界経済を牽引しましたが、既に世界第二位の大国になった中国は2010年代後半から陰りが見え始め、2020年代もかつてのような二けた成長というのは難しいでしょう。
3M株価がピークを付ける2018年1月までは、投資家は中国経済にまだまだ強気で、中国経済の成長に伴って3Mも成長していくと考えていたからこそ、PER30倍台という高い評価をしていたものと考えられます。
ところが、中国経済の減速が鮮明になって、3Mは思ったより成長しなそうだということでこのPERが徐々に剥落していって今日までの長期株価低迷を招いているものと考えられます。
現在の3MのPERは19倍程度まで下がってきて、安定しております。
そして、今回の3Mの株価低迷は、3M製品の競争優位性とは関係なく、中国経済というマクロな要因です。
2020年の3Mは、コロナ禍にも関わらず増収増益を達成しております。
そしてなんといっても営業利益率が2019年の19.21%から2020年には22.25%まで回復しています。
3Mの競争優位性は損なわれいない、
PER剥落により割高感は解消された、
という観点からも、今は比較的3Mに強気になってもよいタイミングではないかと考えます。
但し、昨今半導体不足で自動車生産台数が減少傾向にあり、また原材料価格のインフレ圧力でマージン低下している企業が多く、
3Mももろにその影響を受けるビジネスだと考えられます。
なので2021年3Qの決算をしっかり見て、その影響が短期的であるかどうかを見極めてから追加購入検討したいなと考えます。
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