
1991年12月にソ連が崩壊し、2021年はそれから 30 年が経過します。
ソ連崩壊後、いわゆる体制転換(社会主義に立脚した政治・経済体制から資本主義型の政治・経済体制への転換)を経て現在に至ります。
この30年の経済的な軌跡をマクロ的な観点で見ていくことで資本主義・市場経済の効力についてみていきたいと思います。
1.直近10年で低成長が定着・ソ連崩壊後30年間で経済規模はたったの1.3倍
・1990年代は転換不況(市場経済化に伴う混乱での不況)、財政危機等を経験し苦境に直面。90 年代後半の一人当たり名目 GDPは一時2千米ドルを下回る。
・2000年代はプーチン大統領に政権交代が行われ、原油価格高騰も手伝って実質経済成長率は 5 年平均で 5%近くに達した。「繁栄の 10 年」を謳歌。
・2010年代は実質経済成長率は1%程度に落ち込み停滞。原油価格低迷と、欧米からの経済制裁が経済成長を下押し。

2.原油一本足打法・ロシア経済は原油に大きく依存。原油価格が下がればGDPも下がるという構図。
・この30年間で市場経済化や外資導入といった構造改革を進めて一定の工業力をつけてきたが、原油を輸出して消費財を輸入するという原油依存を脱し切れていない。
・一方、近年のロシアで戦略的な育成に成功した例外的な産業が農業。特に穀物栽培。輸出総額の2%を超える水準まで拡大してきており、すでに小麦の数量ベースの輸出では世界第一位。
3.経済低迷の中で社会は安定・2000年代、原油価格の高騰を受けて経済が「繁栄の10年」を迎えたことでロシアの貧困も徐々に改善し、生活保護制度などのセーフティネットの整備も進んだことから、社会も安定を強める。
・2010 年代は「停滞の 10 年」であったがロシア政府は生活保護の充実や最低賃金の引上げなどを通じて貧困の削減に取り組んでいる。
4.経済発展のための今後の課題(1) 外資導入のためのビジネス環境整備・ロシアの強みは今後も資源であることに変わりなし。効率的な資源開発を行うためには、ロシア企業のノウハウだけでは不十分で、投資資金を賄う観点からも外資参入が必要。
・原油依存からの脱却にも、国内技術だけでは限界があるため、外資導入が望ましい。そのためには、何よりもまずビジネス環境の整備が必要。
・近年、ロシアはビジネス環境の整備を急ピッチで進めており、世銀が毎年行う『ビジネス環境調査』の最新版では 190 ヵ国中 28 位にまでランクを上げた。
・一方で、投資家保護や納税、契約履行、破産処理などの項目で改善の余地が大きい。
(2) 欧米との関係の改善・欧米とロシアの関係は2014年のクリミア危機を受けて悪化し、EUと米国はロシアに対して経済制裁を科した。
・ロシア経済が安定した経済成長を達成するうえで、欧米との関係改善はやはり不可欠
⑶ 権力のスムーズな移行・直近20年間はプーチン大統領が一貫してロシアを率いてきた。2020年7月の国民投票で憲法が改定され、プーチン大統領は最長で 2036 年まで続投可能。
・足元のプーチン大統領への支持率は60%台後半だが浮上の兆しはなく、また政治家としての信頼感(図表 14)は低下。
・ソ連時代を知らない世代を中心にプーチン政権の長期化に対する反発が高まるなかで、有権者の支持をどう集めていくかが当面のプーチン政権の最優先課題
・プーチン大統領がいつまでもロシアのリーダーとしての責務を果たせるわけではない。後継者をどう育成し、権力の移行をスムーズに行うことができるかが、結局のところ、ロシア経済の成長の最大の課題。

参照元:「ソ連崩壊から 30 年が経過したロシア経済の軌跡~権力のスムーズな移行が最大の課題~」土田陽介
<コメント>・結論からいうと、ロシア経済を見ている限り、今のところ資本主義の効力というのはあまり感じられません。
・原油依存すぎて、資本主義の効力よりも、原油価格の威力の方が大きすぎるというのもあるかもしれません。
・また法整備などがまだまだ甘いというのもあるかもしれません。戦後の日本は米国指導の下、先進的な法整備が急ピッチで行われたのに対し、ロシアではそれがなかったためにやや出遅れていると考えることもできるかもしれません。
・また、クリミア危機等、未だに国際社会から反感を買うようなことをしており、グローバル経済の一員になれていないことも原因かもしれません。
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