市民政府論(光文社)を読んだのでその感想です。
【著者と時代背景】ジョン・ロック(1632年~1704年)
イギリスの哲学者・思想家。
イギリスにおける清教徒革命(1642年~1649年)、名誉革命(1688年~1689年)を経験し、長らく続いた絶対王政から民主化していく時代を生きた。
市民政府論は、名誉革命後の1689年に刊行され、民主化を行った名誉革命の妥当性を理論的に証明したもの。
後に、アメリカの独立宣言、フランス革命にも影響を与えた。
【本の概要】ロックは、人は生まれながらにして生命・自由・財産を守る権利を持っていると考えた。
この三つの権利を人権と考え、これらの人権は、どんな権力によっても制限されない、と主張した。
但し、自然状態では他者からそれらを侵害されることがあるため、人々は共同体を作り、人権を守るために国民の代表者で構成される立法部が法律を作り、執行部が法を執行し、独立した裁判官が争いごとを法律に従って仲裁する、という法治国家を作り上げた、というのがロックの語る国の起源。
つまり、国ができたのは、人権を守るために便利であったため。
よって、王様が自己の利益のために、国民の人権を侵害するような行為を働くようなことは間違っているという主張し、絶対王政を否定。
【感想】ロックのように「そもそも国というのは、はじめどのようにして生まれたのか?」を順を追って考えていくやり方はとても説得力があります。
そこでは、まず国という共同体がない完全な自然状態における人間を考察。
そして、自然状態を放棄して共同体を作るに至る合理的理由を解説。
そして、共同体を作るに至った目的を柱として、その目的を達成するために最適な統治形態を説明していくというやり方。
非常にすっと頭の中に入ってきて読みやすいです。
またロックの時代には、未だキリスト教の教えが人々の思想の中心にあり、ロック自身もキリスト教の考え方に一部影響を受けているものの、例えば、市民政府論の冒頭で、
「アダム(最初の人類)に世界を治める支配権があったというものがいるが、アダムはそのような権限を神から明示的に与えられたわけではない。
仮にアダムにそのような支配権があったとして、アダムの正当な後継者を確定するすべ聖書には示されていない。
仮に後継者を確定できたとして、アダムの直系の子孫は誰か、はるか昔にすっかりわからなくなっている。
従って、世に無数の血統や家計がある中で、我こそはアダムの直系の子孫であると言い立てることはいささかもできない。
その点で万人は平等である。」
と、当時当たり前のように考えられていた王権神授説(王権は神から付与されたものであるという考え方)を論理的に否定している。
今でこそ世の中の事象や人間の起源が科学で解明されていき王権神授説を肯定することの方が難しいが、科学が発達していないロックの生きた時代でも、論理的思考によって、よくよく考えれば不自然な統治形態である絶対君主制を否定できるというのは非常に面白いです。
というのも、私たちも、当然のように生まれた国の国民として生き、当然のように法律を守り、当然のように税金を納めていますが、そもそも我々はなぜそのようにしているのか?と考えていくことも重要だと思ったからです。
これは、当たり前のように大学に行き、当たり前のように会社に勤め、当たり前のように毎日満員電車に揺られ出勤し、当たり前のように上司の指示に従っているという、一般的な生き方についても疑問を投げかけることが大事であるのと一緒です。
ロックが提唱した三権分立的な考え方や間接民主制は、まさに現在の先進国の統治形態でそのまま採用されており、なぜこのような統治形態になっているか、その根本を考える上で非常に学びがある本でした。
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