
これまでの世界は、資本主義の最大の特徴である自由市場を世界に広げ、「ヒト・モノ・カネ」の国境を極力取り除くことで世界全体が豊かになっていくことを目指す潮流がありました。
一方現在、米国トランプ大統領や英国のEU離脱などに代表されるように、世界の最先端を走る国が自国第一主義や保護主義を掲げるようになってきました。
ここでは特に「モノ」の流れ、つまり貿易に注目し、自由貿易と保護貿易、どちらが今後の世界の潮流となるかを考えてみます。
<自由貿易>自由貿易とは簡単に言えば関税などの国家の介入を排除した貿易を指します。
こうすることで、世界規模での分業が進み、適した場所で適したものが生産され、とても生産性が高まり、世界全体が効率的に豊かになっていきます。
例えば、農作物であればそれにあった気候や土壌を持っている地域が生産に適していますし、AIやロボットなどのハイテク分野でいうと地理的な特性は関係なく地域の教育レベルに大きく左右されるでしょう。
一方、デメリットとしては、グローバルで競争が繰り広げられるので、自国に競争優位のない分野はどんどん淘汰されていき、それらの分野に携わっていた人たちは職を失います。
つまり、完全な自由貿易を目指すと、最終的には生産性が高く豊かな世界に到達できる可能性が高いモノの、短期的には各国で大量の失業者が発生するというカオスな期間を経る必要が出てきます。
<保護貿易>保護貿易は、こういった状態を避けるものです。
保護貿易は、関税をかけることで、海外の安いモノやサービスが流入してくるのを防ぎ、国際的に見れば競争力がない事業でも、国内で生き残っていけるようにするのです。
日本での代表例はお米でしょうか。
日本でコメを買うと、だいたい5kgで約2000円、つまり約400円/kgするわけです。
一方で、国際的なコメ相場は農林水産省によると50円~60円/kg(2020年6月現在)のようです。
日本のコメは国際的には競争力が全くありません。
ただ、現在の日本では海外の米を輸入する場合、402円/kgの関税がかかります。
こうすることで日本の農家さんを守っているわけです。
<自由貿易 vs 保護貿易>本題に戻ると、自由貿易と保護貿易、どちらが世界の潮流となるか?
世界経済全体を考えれば答えは当然生産性の高い自由貿易でしょう。
但し、自由貿易を徹底してやるためには、「ヒト・モノ・カネ」のヒトとカネについても徹底的に自由化しなければならないと考えます。
例えば、日本の人件費では、農業を行うのは合理的ではなく、日本の強みである自動車産業などで働くことが求められてきます。
一方で日本の中にも、自動車関連の仕事はどうしても苦手だけれども、農作業がとても得意な人だっているわけです。
そのような人が簡単に農業を強みとしている国・地域に移住できるのならばいいかもしれません。
但し、そこは言語や文化の問題でなかなか難しいわけです。
そうなると、やはり自由貿易を突き詰めると、局所的には各国で格差が広がり、生きていくことが困難な人達がたくさん出てきてしまいます。
そして、世界の大半を占める民主主義国家というのは、そういった弱い立場の人を守る傾向が強いので、やはり世界の潮流としては保護貿易が軸足としてあって、部分的に自由貿易を行っていくという方向性にならざるを得ないということになるでしょう。
以上
りろんかぶお
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