
出典:ダイヤモンド
以下の不等式をご存じの方は多いと思います。
r>gこれは2013年にトマ・ピケティの著した「21世紀の資本」にて示されたもので、資本収益率(r)は経済成長率(g)を常に上回るという歴史的事実を指します。
ここで、「資本収益率(r)」は資本から得られる金利や配当利回りなどを指します。
資本家は資本収入を再投資することで、毎年の資本収入を資本収益率同じ比率で増やしていくことができます。
(例えば、資本収益率が10%であれば、初年度は100の資本から10の収入が、次年度は110の資本から11の収入が得られます。次年度の収入は初年度から資本収益率と同じ10%増えていることがわかります。)
次に、「経済成長率(g)」はGDP成長率です。
GDP構成要素は「労働者賃金+営業余剰+固定資本減耗・その他」です。
実は配当などの資本収入も営業余剰の中に含まれますが、全体に占める割合としては通常労働者賃金が最も大きいので、ここでは「経済成長率」≒「労働者賃金の伸び率」として考えます。
つまり、「資本収益率(r)」>「経済成長率(g)」は、労働者よりも資本家の収益の伸び率の方が大きいことを意味し、資本主義経済においては時間の経過とともに貧富の格差はますます拡大していくことが歴史的な事実であることを暴いたのです。
また、2017年に、国際非政府組織(NGO)オックスファムは、世界で最も裕福な8人と、世界人口の下位半分に当たる36億7500万人の資産額がほぼ同じだとする報告書を発表して話題になりました。
これらによって、現在の富の大部分がほんの一握りのお金持ちに集中しており、貧富の格差は想像を絶するほど広がっているという認識を多くの人が持っていると思います。
一方で、貧富の格差というのは重要でしょうか?
個人的にはあまり重要ではないと思っています。
なぜなら、人間は常に他人との比較を通して自分の現在位置を認識する生き物だからです。
そして自分と他人との間に「差」があるときに、劣等感に浸ったり、優越感に浸ったりするのです。
そしてその「差」の大きさと、劣等感・優越感の大きさは比例しないように思います。
例えば、年収500万円の人の場合、年収600万円の人に対する嫉妬(年収差100万円)よりも、年収800万円の人に対する嫉妬(年収差300万円)の方が3倍大きいのでしょうか?
それはそんなことないと思います。
逆に、差が小さいほうがよりその人との距離が現実的であり、嫉妬が大きいかもしれません。
(年収500万円の人がジェフベゾスやビルゲイツに嫉妬しないのと同じです)
つまり、どんなに頑張って平等な社会を作ったとしても、他人と自分との間に少しでも「差」があれば不満が募るのです。
よって格差への不満の議論というのはとても不毛なように思えます。
では、格差問題は全てが不毛な議論かと言われればそうでもないと思います。
世の中には、貧しい家庭に生まれて子供のころから労働を強いられ、教育を受けられずに、一生貧しい生活を余儀なくされる人々も多く存在します。
このような人たちに、他の人と同じように平等にチャンスが与えられているとは思えません。
つまり生まれた環境に関わらず、努力が報われる社会であるべきとは思います。
では、格差を助長するといわれる資本主義は、このような人々をさらに貧しくするようなシステムなのでしょうか?
このような人たちが世界にどれくらい存在しているかを把握するデータの一つに、世界銀行がまとめる絶対的貧困率データがあります。
絶対的貧困とは、たとえば、食べ物がない、家がないなど人間としての最低限の生存条件を欠くような貧困のことを意味します。
これを世界銀行は「日給1.9ドル以下の人々」と定義しています。(じゃあ日給2ドルあれば生きていけるかというとかなり疑問ですが)
世界人口に占める絶対的貧困率と絶対的貧困者数を現したのが下図です。


資料:世界銀行のデータを基に著者が作成
これを見れば、絶対的貧困率も貧困者数も年々急速に改善してきていることがわかります。
ピケティの不等式「r>g」だけ見れば、資本主義は格差を拡大させるひどい経済システムだと思うかもしれません。
ただ、資本主義だからこその急速な経済発展の中、資本家は経済発展以上にますますお金持ちになっていっているかもしれませんが、最下層もかなり底上げされていることは事実です。
世の中全体がみな人間的な生活をしていけるようにするという意味では、他の経済システムに比べれば資本主義はかなりマシなシステムといえるかもしれません。
以上
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