
現在コロナウイルス感染拡大の影響で相場全体が暴落しているところですが、とりわけ下げ幅がきついのがボーイングです。
2019年に400ドルを超えたものの、現在はその1/4まで値を下げました。

(ヤフーファイナンス)
今回は、これまでのおさらいとして、なぜボーイングがここまで極端に大暴落しているのか?、今は買い場なのか?、という点を詳細に調べていきたいと思います。
1. なぜ大暴落しているのか?① 737MAX事故ボーイングが大暴落している理由の一つは、主力製品の737MAXの大規模事故が2回立て続けに起こったことに端を発しています。
2018年10月29日、インドネシアのジャワ海でライオン・エア610便(ボーイング737MAX 8型機、PK-LQP)が離陸後約10分で墜落し、乗客乗員189名全員が死亡しました。
そして、2019年3月10日、エチオピアのアディスアベバ、ボレ国際空港より離陸したエチオピア航空302便(ボーイング737MAX 8型機、ET-AVJ)が、離陸後約6分で墜落し、乗客乗員157名全員が死亡しました。
ボーイング737MAXは、半年の間に2回の大事故を起こし、どちらも乗員乗客全員死亡という大惨事となり、合わせて346名の人命が失われ、世界中に衝撃を与えました。
航空機事故はパイロットのミスによる事故の可能性もありますが、2つの事故の経緯があまりに酷似していたため、ボーイング737MAXの安全性が強く疑われることになったのです。
その後調査が行われ、2019年4月にボーイングのCEOから正式に、上述2つの大事故は、737MAXのソフトウェアシステムMCAS(Maneuvering Characteristics Augmentation System)に原因があったことを認め、謝罪をしました。
MCASとは何か?
ボーイング737MAXは737の第四世代(第一世代:737オリジナル、第二世代:737クラシック、第三世代:737ニュージェネレーション)といわれております。
737オリジナルの初飛行は1967年なのでかなりの歴史があります。
世代を経るごとに、燃費向上などの理由から徐々にエンジンの大型化が行われました。
しかし、737は当初ジェットエンジンの大型化を想定していなかったので、基本設計通り大きなエンジンをそのまま翼の下にぶら下げてしまうと地面とジェットエンジンの間に十分な距離を確保できなくなってしまいます。
そこで、エンジンを翼の真下にぶら下げるのではなく、翼よりもやや前方に出し、位置をやや上にずらすことで、エンジンと地面との距離を確保したのです。

但しこうすることで新たな問題が発生しました。
エンジンを基本設計よりもやや前方かつ上方に持ってきたことで、飛行機が離陸する際に機体が斜め上に角度をとった時、その角度を必要以上に大きくしてしまう(機首が上を向いてしまう)方向に力が働いてしまうことがわかったのです。
機首が必要以上に上を向いてしまうと風の抵抗をもろに受けて失速してしまうので、これを修正するために導入されたのがMCASです。
MCASは2つあるセンサーが、機体の角度・対空速度・高度などを感知し、これらが閾値を超えた場合に作動し、尾翼を自動的に操作して機体を降下させるシステムです。
そして、ライオン・エアの飛行データ解析によれば、2つあるセンサーのうち1つが故障により誤った角度を示していたことで、MCASが機首が上がりすぎていると判断して下降操作を行い、上昇操作を行っていたパイロットとせめぎ合いになる形で墜落してしまったことが発覚しました。
ここまで聞くと、センサーの故障が原因だったのかと思うかもしれませんが、航空機は一事が万事につながるため、基本的には一部が故障していてもバックアップ機能が備わっているべきなのです。
ボーイングの過ちとしては、機体制御不能の可能性を十分に考慮しておらず安全装置を付けていなかったこと、更に飛行機の角度を知らせる警告灯が点かなかった設計上の問題などが挙げられています。
また、アメリカ連邦航空局(FAA)の報告書では航空会社とパイロットにも非があったことを示しています。
乗組員は機内での問題や関連する警告への対応を調整しておらず、訓練の成績が悪かった副操縦士は、覚えておくべきチェックリストを思い出せなかったとあります。
機長は操縦装置と格闘し、20回以上機首の上げ下げを繰り返し、その後、操縦装置を副操縦士に託し、その直後飛行機は海に墜落したと報告しています。
更に、ライオン・エア機は前回の飛行でも同様の不具合が発生していたようで、その時はうまく対応したものの、墜落機の乗組員にはこの情報が伝えられていなかったことも判明しています。
いずれにしても、ボーイングに非があったことは事実で、ボーイングもこれを認めています。
エチオピア航空302便の事故後、各国から737MAXの運航停止命令が出されるようになり、最終的にはFAAからも運用停止が発表され2019年3月14日を最後にボーイング737MAXは飛行していません。
現在ボーイングは737MAXの生産を停止しておりますが、737MAXは同社の主力製品であることから、業績への影響も甚大であり、これが2019年のボーイング株価低迷につながっています。
② コロナショック上述の通り、737MAXの運航停止という大きな打撃を受けている中、迎えたのがコロナショックです。
世界的なコロナウイルスの感染拡大に伴い、各国が国境封鎖を行い航空需要が激減しました。
これに伴い、多くの航空会社が大規模な減便を行い、売上激減に起因する資金繰りの不安が増し、航空会社の株価も大暴落しています。
このようの状況下、航空機需要もしばらく低迷することが想定され、ボーイングとしては昨年から続く737MAXの問題と合わせ、ダブルパンチを食らうこととなりました。
ボーイングは現在確保済みの138億ドル(約1兆4300億円)の融資枠を3月13日にも使い切る見込みであることを発表し、昨年から続く収入の激減が長引きそうなことによる資金繰り不安が一気に増し、いわばパニック的な売りが重なり、ここまでの暴落となってしまったのです。
これらが、ボーイング株価大暴落の背景です。
(続く)
以上
りろんかぶお
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