
バフェットの名言の中に、
「周りがどん欲な時に恐怖心を抱き、周りが恐怖心を抱いている時にどん欲であれ。」というものがあります。
つまり、大暴落時等、みんながパニックになって冷静な判断ができないときは、優良企業でさえかなりの割安水準まで売り込まれるので、そのようなときに大量に買い出動した方がいい結果が得られるというものです。
では、実際にバフェット率いるバークシャーハサウェイは、直近の大暴落相場であったリーマンショック(2008年9月)の時にどのような投資行動を行っていたかを詳しく調べてみたいと思います。
<リーマンショック時のNYダウ株価チャート>
・上図の通り、リーマンショック(2008年9月)前の最高値は2007年10月頃の14000ドル程。
・その後サブプライムショックなどの影響でリーマンショック直前までに11400ドル程迄下落。
・2008年9月15日のリーマンブラザーズ破綻を受けて一気に金融市場がパニックになり、半月で8500ドル程度の水準まで下落。
・その後、実体経済への影響なども見えてきて、2009年3月に大底の6,600ドルの水準まで下落しました。但しそこからは順調に株価を上げていくという流れでした。
<バークシャーハサウェイの投資ポジション>※$0.5 billion (約550億円)以上の投資のみマーカーで色付け
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普通株(保有時価$500mil以上の企業) |
| 2007年12月末 | 2008年12月末 | 2009年12月末 |
| 企業 | 企業 | 保有株数増減 | 企業 | 保有株数増減 |
| The Coca-Cola Company | The Coca-Cola Company | -(変動せず) | The Coca-Cola Company | - |
| Wells Fargo & Company | Wells Fargo & Company | ⤴ | Wells Fargo & Company | ⤴($0.7 bil) |
| American Express Company | P&G | ⤵ | American Express Company | - |
| P&G | ConocoPhillips | ⤴($6.0 bil) | P&G | ⤵ |
| Burlington Northern Santa Fe | Kraft Foods Inc. | ⤴ | Kraft Foods Inc. | - |
| Johnson & Johnson | American Express Company | - | POSCO | - |
| Kraft Foods Inc. | U.S. Bancorp | ⤵ | Wal-Mart Stores, Inc. | ⤴($1.0 bil) |
| U.S. Bancorp | Johnson & Johnson | ⤵ | BYD Company, Ltd | ⤴ |
| Tesco plc | Sanofi-Aventis | ⤴ | Sanofi-Aventis | ⤴ |
| POSCO | Tesco plc | - | ConocoPhillips | ⤵ |
| Anheuser-Busch | POSCO | ⤴ | Johnson & Johnson | ⤵ |
| Moody’s Corporation | Wal-Mart Stores, Inc. | - | U.S. Bancorp | ⤴ |
| Sanofi-Aventis | Washington Post | - | Tesco plc | ⤴ |
| ConocoPhillips | Swiss Re | ⤴($0.8 bil) | Others |
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| Washington Post | Others |
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| Wal-Mart Stores, Inc. |
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| White Mountains Insurance |
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| USG Corp |
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| Others |
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持分法適用会社(持分20%以上の投資先) |
| 2007年12月末 | 2008年12月末 | 2009年12月末 |
| 企業 | 企業 | 保有株数増減 | 企業 | 保有株数増減 |
| なし | Moody’s | - | Burlington Northern Santa Fe | ⤴ |
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| Burlington Northern Santa Fe | ⤴ |
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優先株 |
| 2007年12月末 | 2008年12月末 | 2009年12月末 |
| 企業 | 企業 | 保有額 ($ billoion) | 企業 | 保有額 ($ billoion) |
| なし | GE | 3.0 | GE | 3.0 |
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| Goldman Sachs | 5.0 | Goldman Sachs | 5.0 |
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| Wrigley | 2.1 | Wrigley | 2.1 |
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| Dow Chemical | 3.0 |
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| Swiss Re | 2.7 |
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融資 |
| 2007年12月末 | 2008年12月末 | 2009年12月末 |
| 企業 | 企業 | 保有額 ($ billoion) | 企業 | 保有額 ($ billoion) |
| なし | Wrigley | 4.4(劣後融資) | Wrigley | 4.4(劣後融資) |
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| Wrigley | 1.0(優先融資) |
<普通株>※500百万ドル(約550億円)以上の投資のみ
・リーマンショック前後の大量購入した普通株はConoco Phillips(5,969百万ドル)とBNSF(26,500百万ドル(買収))が巨額です。
・Conoco Phillipsの株式購入はリーマンショック前ですが、バフェット自身大失敗であることを認めております。Conoco Phillipsは石油会社なので業績が油価に大きく左右されます。そして油価は20-08年6月の140ドル近辺をピークにリーマンショックの影響で株価以上に大暴落し、2008年末までに40ドルを切る水準まで下落してしまったのです。油価暴落を受け、当然Conoco Phillipsの株価も暴落し、2009年にはバフェットも大部分を売却していますがこの投資でかなりの大損をしました。
・BNSFは北米最大の貨物鉄道会社の一つ。バフェットは、米国における貨物輸送においてはトラックよりも鉄道が優位と見て、2006年から同社の株式購入を開始し、2009年末時点で22.5%を保有していたが、2010年に残りの全株式を購入することで合意。
・他にも、再保険会社のSwiss Reや、元々のお気に入り銘柄のWels Fargo、Walmartもこの際に大量購入しております。
Conoco Phillips購入時期:2008年前半
購入金額:5,969百万ドル(それまでの持分とあわせると当時合計7008百万ドル投資(簿価))
Swiss Re購入時期:2008年
購入金額:773百万ドル
Wels Fargo購入時期:2009年
購入金額:692百万ドル(それまでの持分とあわせると当時合計7,394百万ドル投資(簿価))
Walmart購入時期:2009年
購入金額:951百万ドル(それまでの持分とあわせると当時合計1,893百万ドル投資(簿価))
BNSF(100%買収)購入時期:2010年2月12日
購入金額:26,500百万ドル(それまでの持分とあわせると当時合計約27,100百万ドル投資(簿価))
<優先株・融資>・実は、リーマンショック後に大胆な投資を行っていたのは普通株ではなく優先株及び融資でした。
・優先株とは融資と普通株の間のイメージです。多くの場合、配当や会社清算時の残余財産を普通株より優先して受ける権利を有する一方、議決権に一定の制限が付された株式のことを指します。
・バークシャーは2008年以降の2年間で、GS、GE、Wrigley、DOW、Swiss Reに約21,000百万ドル投資及び融資しているのです。そしてその多くは、10%前後の固定配当があるのに加え、期間内に優位な価格で普通株に転換出来るオプションがついています。つまりリスクを抑えて確実に儲けられるような投資を行っていることがわかります。
・当時は資金繰りに窮していた企業が多く、金融機関も貸し出しをかなり渋っていたので、バークシャーの巨額の支援は多くの起業を救ったのです。
Goldman Sachs購入時期:2008年10月1日
購入金額:約5,000百万ドル
優先株配当:年率10%(固定)
バークシャーのオプション:期間5年の間、優先株を普通株43,478,260株に転換可能(つまり期限内であれば時価がいくらであれ、$115/株で5,000百万ドル分投資できるということ)
期前弁済:GSは5,500百万ドル払うことでいつでも期前返済可能
Wrigley購入時期:2008年10月6日
購入金額:約2,100百万ドル
優先株配当:年率5%(固定)
バークシャーのオプション:バークシャーは2016年に売買できる権利を得る
Wrigley(劣後融資)購入時期:2008年10月6日
融資金額:約4,400百万ドル
利子:年率11.45%
満期:2018年
GE購入時期:2008年10月16日
購入金額:約3,000百万ドル
優先株配当:年率10%(固定)
バークシャーのオプション:期間5年の間、優先株を普通株134,831,460株に転換可能(つまり期限内であれば時価がいくらであれ、$22.25/株で3,000百万ドル分投資できるということ)
期前弁済:GEは3,300百万ドル払うことでいつでも期前返済可能
Swiss Re(転換社債)購入時期:2009年3月23日
購入金額:3,000百万スイスフラン(当時約2,700百万ドル)
社債利子:年率12%(固定)
バークシャーのオプション:2012年3月23日以降、転換社債を普通株120,000,000株に転換可能(つまり期限内であれば時価がいくらであれ、25スイスフラン/株で3,000百万スイスフラン分投資できるということ)
期前弁済:Swiss Reは2011年3月23日までであれば4,200百万スイスフラン、それ以降であれば3,600百万スイスフラン払うことでいつでも期前返済可能
Dow Chemical購入時期:2009年4月1日
購入金額:約3,000百万ドル(3百万株)
優先株配当:年率8.5%(固定)
Dowのオプション:2014年4月以降、Dowの株価が30日間の内20営業日以上の間$53.72/株を超えた場合、Dowは1優先株あたり普通株24.201株に転換できる(つまり期間中であれば時価がいくらであれ、$41.32/株で上限3,000百万ドル分迄投資できるということ)
期前弁済:GEは3,300百万ドル払うことでいつでも期前返済可能
Wrigley(優先融資)購入時期:2009年
融資金額:約1,000百万ドル
利子:年率5%
満期:2013年~2014年
<まとめ>・リーマンショック後のバークシャーの投資行動としては、優先株に重点を置いていることがわかります。
・また、優先株投資を行うための資金を捻出するため、バフェットが優良株と認める、P&G、Johnson & Johnson、Moody’s等を一部売却しており、それほどまで全力投資していたことがわかります。
・次に大暴落相場が来た時も、前回と同じように積極的に好条件の優先株投資を行うかもしれません。
以上
りろんかぶお
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