
今回は意外と知らないGDP(Gross Domestic Production、国内総生産)について徹底解剖していきます。
1. GDPとはGDPとは一定期間内に日本の国内で生み出された付加価値のことです。
ここでいう付加価値とは、商品やサービスの生産額(販売額)から、これを生産するために使われた原材料、電気・ガス、輸送サービス、用紙類など、他の生産者から購入した分(中間投入額)を除いたものです。
自動車の例で見てみましょう。

出典:http://25-500.com/gdp%E5%8A%B4%E5%83%8D%E5%88%86%E9%85%8D%E7%8E%87%E5%B9%B4%E5%8F%8E%E5%9B%BD%E6%B0%91%E7%B5%8C%E6%B8%88%E8%A8%88%E7%AE%97%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%AB%E3%83%9F/
上図の通り、まず鉱山で鉄鉱石が採掘されます。
これは地球に元々ある資源を労働力を用いて取得する行為なので、鉄鉱石の値段の構成要素は、採掘に要する労働への「賃金」と鉄鉱石採掘企業の「利潤」です。
ここで得られた鉄鉱石を原材料として、そこに更に労働者が付加価値を加え、鋼板、プレス、塗装などの工程を経て自動車が完成します。
原材料を大元までたどると「賃金+利潤」で構成されているので、自動車製造という一連の工程の中で「賃金+利潤」を足し合わせていくとその合計は最終生産物である自動車の販売額と一致します。(下図)

出典:http://25-500.com/gdp%E5%8A%B4%E5%83%8D%E5%88%86%E9%85%8D%E7%8E%87%E5%B9%B4%E5%8F%8E%E5%9B%BD%E6%B0%91%E7%B5%8C%E6%B8%88%E8%A8%88%E7%AE%97%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%AB%E3%83%9F/
※実際には原材料費のみならず、電気・ガス代、輸送サービス、用紙等の費用も掛かりますが、これらも究極まで元をたどれば、労働力を用いて自然から得たものなので「賃金+利潤」で構成されています。
GDPは、生み出された付加価値のことを指すので、ここでは「賃金+利潤」に該当し、よってGDPとは最終生産物の販売価格の合計であらわすことができます。
但し、GDPは「日本の国内で生み出された付加価値」なので、仮に自動車の例で鉄鉱石が全て海外から輸入された場合、鉄鉱石を得るまでの付加価値は海外で生み出されたものなので日本のGDPとしては「自動車の販売額―鉄鉱石の輸入額」となります。
2. 三面等価このように、国内で生み出された付加価値は、企業で働く人々の賃金や、企業の利益となって債権者や株主に分配されます。
また、生産されたものは必ず誰かに購入されるので、生産の合計と支出の合計は一致します。
(実際には生産されたモノが売れ残ってしまうということが起こりますが、GDPの計算上、在庫は生産者が購入したものとされます。)
このように生産者が生産した金額、企業や労働者に分配された金額、生産物を購入するために支出した金額、の3つの金額の合計は必ず等しくなり、これを「三面等価」の原則と言います。(下図)

出典:内閣府
この3面等価の観点から、以下の2010年のGDPを分配面、支出面、生産面から具体的に見ていきましょう。

出典:ウィキペディア
<生産面>生産面では、産業(金融法人、非金融法人、家計)、政府、対家計民間非営利サービス生産者の三つの活動主体に分類され、それぞれの活動主体が生み出した付加価値の合計が生産面で現れます。
政府は中央政府、地方政府、社会保障基金(公的年金、健康保険、雇用保険等)の3つからなり、様々な行政サービスを生産(生産面)する一方で、政府自身がそれを消費するとみなして支出面のGDPにも計算されています。
また道路や橋などの公共事業支出は、公的固定資本形成といして政府の支出として計上されるが、実際にはそれらの工事は民間企業に発注されるので、民間の建設会社や土木会社の生産として生産面に出てきます。
ちなみに、株や土地の売買で発生するキャピタルゲイン・ロスに関しては、株や土地の所有者が移転しているだけで新たな付加価値が生み出されているわけではないのでGDPには出てきません。
<分配面>基本的には企業の利益を計算するときの以下の式を考えるとわかりやすいです。
企業の純利益=売上高―原材料費―減価償却費―人件費―税金+補助金(あれば)
これを図の言葉を当てはめていくと以下のようになります。
営業余剰・混合所得=生産物販売額―原材料費―固定資本減耗―雇用者報酬―生産・輸入品に課される税(消費税や輸入関税等)+補助金
この式を変形すると
GDP=生産物販売額―原材料費
=営業余剰・混合所得+固定資本減耗(設備の減価償却費のようなもの)+雇用者報酬+生産・輸入品に課される税―補助金
但し、生産のために使った設備は、年々古くなって価値が低下していくので、これを表す固定資本減耗は、費用として付加価値から控除されるべきものです。(実際には企業の会計上も減価償却費は費用として計上されますしね)
但し、固定資本減耗額は正確に推計することは容易ではないので、固定資本減耗を控除しない付加価値の合計という意味で、国内「総」生産(「Gross」Domestic Production)といわれるのです。
<支出面>消費支出は、民間のみならず政府も行うので、それが政府最終消費支出としてあらわされます。
在庫品増加は、前述の通り、生産者により消費されたものとみなして、前年対比の増加分が支出面でカウントされます。
また財貨・サービスの輸出は、日本で生産されたものが、海外で販売されたものなので、支出面でカウント、財貨・サービスの輸入は海外で生産されたものなので国内で生み出された付加価値ではないので控除する必要があります。
ここで疑問なのは、なぜ総固定資本形成(企業の設備投資のようなもの)が入っているのでしょうか?
というのも、基本的に、企業が購入する物やサービスは生産を行うためのものなので、企業の行う消費は全て中間投入であって、最終消費を行うことではありません。(つまり支出面ででてくるべきではない)
これは、分配面で固定資本減耗が控除されていないことに関係しています。
設備投資というのは生産を行うための費用なので、この金額がそのまま費用として分配面からも控除されていれば、当然支出面でも入れる必要はないのです。
但し、固定資産形成を生産活動期間でならした固定資本減耗が、生産を行うための中間費用として、分配面から控除されていないのであれば、これは中間投入ではなく、最終消費としてカウントしなければ分配面と支出面が一致しなくなってしまいます。
このような理由から、企業が資本財を購入する行為である総固定資本形成は支出面にカウントされます。
以上
りろんかぶお
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