
今回はライドシェア界のパイオニアであるUberについて研究していきます。
日本ではUber Eatsが有名ですが、Uberの本業は、移動したい人と、人を運んで運賃を稼ぎたい一般ドライバーを結びつける配車サービスです。
私がUberと出会ったのは2015年春に米国出張に行ったとき。
このビジネスモデルに衝撃を受けました。世の中の使われていない潜在的な資源(使われていない車や使われていない労働力)を有効活用して、世の中の既存の需要(移動したい)を満たすというモデル。
世の中がすごく効率化されて、それでいて利用者側のコストも下がるという、驚くべきビジネスモデルだなと思ったことを今でも覚えております。2015年の米国ではもうみんなが普通にUberを使っていました。
Mobilityの業界に大きな革命をもたらしたUberについて、今回は設立当初から現在までの歴史と現在のサービス概要について簡単に記載してみます。
<Uberの歴史>2009年:Uber設立(当時の社名はUberCab)
2010年6月:配車サービス開始。(当時はドライバーを自社雇用し、リムジンなどの高級車による高価格対の配車サービスを提供)
2010年10月:シードマネーとして1.25百万ドル調達
2011年2月:シリーズAで11百万ドル調達、企業価値評価額は60百万ドル
2011年12月:
・フランスを皮切りに世界進出(ウーバーのビジネスモデルは先行者利益が大きいため、初期の段階で世界進出を視野に)
・シリーズB 32百万ドル調達、ここでジェフベゾスも出資
2012年7月:Uber Xを提供開始(ここで、一般ドライバーとユーザーを結びつけるマッチングサービスとなり現在のビジネスモデルとなる。当時の運賃はタクシーと同程度)
2012年8月:現在北米市場のライバルであるLyft設立
2013年8月:
・インド、アフリカに進出。
・シリーズCでGoogleから258百万ドル調達。企業価値は37.6億ドル
2014年7月:
・中国進出。
・シリーズDで1200百万ドル調達、企業価値は170億ドル。
2014年8月:
・Uber Pool開始(目的地が似通った異なる利用者を相乗りさせて、運賃を割り勘にすることで安くするサービス)
・Uber Eats開始。食事配達サービス(日本では自転車が多いが米国では車で配達がメイン。ドライバーの業務の選択肢の一つ)
2015年5月:自動運転の研究開始
2016年7月:Uber中国法人を現地配車サービス大手滴滴出行(DiDi)に売却し、DiDiの18%の株式を取得。
2018年2月:ロシア、アルメニア、アゼルバイジャン、ベラルーシ、ジョージア、カザフスタンでの事業をロシアのYandex Taxの配車事業と統合して新会社設立。Uberは225百万ドルを出資し、新会社の36.6%のシェアを獲得。
2018年3月:東南アジアの事業をGrabに売却し、Grabの27.5%の株式を取得。
2019年5月:米国株式市場に上場。初値での時価総額は697億ドル
<Uberのビジネス>① 配車サービス移動したい人と一般のドライバーを結びつける配車サービス。特徴は以下。
・オンデマンド(スマホ上で簡単に配車可能)
・シェアリング(元々他用途に使われている車をシェアすることで低価格を実現)
・評価(利用者がUber利用後にドライバーを評価できる為、ドライバーによるサービス向上を促進)
・ダイナミックプライシング(需給バランスによって運賃が変動。利用者が多い時間帯や場所では運賃が自動的に高くなるも、高い運賃を目当てに多くのドライバーが集まるので次第に需要と供給がバランスされるという市場原理を持ち込んだ仕組み。また、料金はメーター制ではなく距離で決定するため配車依頼時に確定)
・スムーズ決済(支払いはアプリ上で完了するため決済は不要。ドライバーと利用者の間で直接お金のやり取りがないので利用者の心理的安心度が向上)
・Uber Pool(目的地が似通った異なる利用者を相乗りさせて、運賃を割り勘にすることで安くするサービス)
・AI導入(どの時間帯にどこでUberの利用者が多そうかというのを大量のデータを基にAIが予測し、あらかじめドライバーが集まる仕組みを導入)
② Uber Eats食事を配達してほしい人と、配達をしてお金を稼ぎたい人を結びつける食事宅配サービス。日本では自転車が多いが米国では車で配達がメイン。(ドライバーの業務の選択肢の一つ)
③ Uber Freight荷物を運びたい人と、輸送業者をつなぐマッチングサービス。
④ Uber Jump電動自転車や電動キックボードのシェアリングサービス。
⑤ 研究開発・自動運転
・Uber Elevate(航空機チャーターに関するもので、航空機での移動を身近なものにするために、障壁を取り除く様々な研究を行っている。)
⑥ その他Uber Health、Uber Workなど。
STOP
・歴史をみて思ったことは、Uberはほんとに早い段階で世界展開したんだなと。Uberのようなサービスでは、ユーザー目線ではより多くのドライバーがいるアプリを選びたいし、ドライバー目線でもより多くのユーザーがいるアプリが良いと思われます。よってマーケットリーダーがどんどん強くなるので先行者利益が非常に大きく、これを十分に理解してまだ米国で足場が固まらないうちに一気に世界に進出したんですね。すごい。
・各国で、地元企業との激しい競争があって結果的に撤退している国もあるのですが、撤退と引き換えに、ライバル(DiDi、Yandex、Grabなど)の株式をしっかり取得しているので、撤退した市場の利益もしっかり取り込める形になっております。Uberブランドを浸透できないのは確かに痛いのですが、これはこれでいいのかと。
・ビジネスに関しては、Uberの配車サービスがいかに多くの革新的な要素から成り立っているかがわかります。ダイナミックプライシングによる需給バランスの平準化や、AIによる客位置予測などは、一見細かいことに思えるかもしれませんが、ドライバーのアイドリング時間(仕事をできてない時間)をできるだけ減らすためのこういった仕組みに磨きをかけることが、他社との大きな差別化要因になってくると思います。
・電動自転車や電動キックボードの事業も始めてますが、これは自転車やキックボードを自社保有しているので、マッチングサービスに特化していた従来のビジネスモデルとは全く異なるものです。この分野は一気に広めることは難しいと思いますが、あらゆるロジスティクスの分野で革命を起こそうとするUberの意思が感じられます。
次回はUberの収益性や将来予測などについて見ていきます。
以上
りろんかぶお
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