<りろんかぶおコメント>りろんかぶおの競争優位性評価(5段階評価)⇒
★★★★☆
1. 企業概要・インテルは世界的半導体メーカーです。半導体の中でも演算処理などを行うマイクロプロセッサー(MPU)に強みがあり、PC向けのCPU(中央演算処理装置)では80%程のシェアを持っておりほぼ独占状態。インテル Core iシリーズが有名。
2. 業界展望・半導体市場規模の推移は以下の通りです。

出典:World Semiconductor Trade Statistics (WSTS)
・半導体の歴史では、1980年代からPC向けで爆発的に需要が伸び、その後デジタル家電、スマホ、クラウドなどの需要が出てきて、拡大の一途をたどっております。
・今後、世の中に普及されることが確実視される、IoT、AI、自動運転などにおいても多くの半導体が必要となり、更にデータの世紀ともいわれる今世紀では、大量のデータを処理する必要があり、データのストレージや処理に欠かせない半導体は今後も需要が堅調に伸びていくものと考えられます。
3. 個別企業競争力・堅調な伸びが期待できる半導体業界において、インテルの競争力はどうなのでしょうか?
・<セグメント毎ビジネスモデル>で詳細説明しますが、半導体は”種類”と”製造工程”の二つの軸で考えていく必要があります。
・まず半導体の種類は大きく、メモリIC、ロジックIC、アナログICの三つ。インテルは中でも技術難易度が高いロジックICに強く、MPUやCPUなどもここに分類されます。AMDやクアルコム、エヌビディア等もここに分類されます。
・次に製造工程でいうと、コアIP、チップデザイン、製造の三つに分けられます。インテルはこのすべてを自社完結でやっておりますが、通常はそれぞれの製造工程ごとでプレイヤーが異なりロジックICでいうと以下が主要プレイヤーになります。
コアIP:ARM、AMD
チップデザイン:AMD、クアルコム、エヌビディア、アップル、etc
製造:台湾セミコンダクター(TSM)、サムスン電子、etc
・次に、それぞれの製造工程別にインテルの競争力を見ていきます。
・まずはコアIP。ここは実質インテルとARMの二強状態。PCはインテル、スマホ・AIはARM、データセンターは両社で激しくシェア争い中という状態です。PCに関してはインテルの競争優位性は圧倒的でこれは簡単に揺らぐものではないでしょう。
・次にチップデザイン。こちらもPCはAMDが激しい追い上げを見せるもののインテルはいまだに8割以上のシェアを持っており強い競争優位性あり。またデータセンターにおいてもAMD、そして近年ではエヌビディアと激しいシェア争い中。一方でスマホはクアルコムに、AIはエヌビディアにシェアをほとんど持っていかれている状況。
・次に製造工程。最大のライバルはTSM。製造というと付加価値の低い工程ととらえられがちですが、半導体の場合は異なります。なぜなら半導体素子の大きさは現在最小で5nm迄小さくなっており、製造難易度が非常に高いためです。
・また、半導体の処理能力を上げる手っ取り早い方法は、単位面積当たりの半導体素子の数を増やすことで、そのためには半導体素子が小さければ小さい方がいいわけです。そして、小さい半導体素子を製造する技術の面でインテルはTSMに大きく後れを取っているのです。以下は半導体素子の大きさとそれを量産開始した年です。
インテル
22nm:2011年
14nm:2014年
10nm:2019年
7nm:2022年末~2023年初頭
TSM
16nm:2015年
10nm:2017年
7nm:2019年
5nm:2020年
3nm:22年後半
・半導体処理能力には素子の大きさのみならず密度も重要なので、一般的にはインテルの10nmとTSMの7nmは同程度の処理能力といわれますが、それにしてもインテルの遅れは否めません。
・製造能力で後れを取ることはかなり重大です。というのも、製造をTSMに委託するAMD、クアルコム、エヌビディアは既に5nmの半導体素子で製品開発ができるのでその分、性能面でインテルに差をつけやすいからです。これを受け、大きな危機感を感じ取ったインテルは一部製品の製造をTSMに委託することで合意しています。
・ここまでを総括すると、インテルの競争優位性がある部分は、PCとデータセンターにおけるコアIPとチップデザインということになります。一方で、スマホやAI等のコアIP、チップデザインでは競合他社が優勢となっており、製造に至ってはTSMに完全に後れを取っているのが現状です。
・半導体が多くのデジタル製品で使われるようになり市場規模が大きくなってきた中、かつてよりもプレイヤーが多く現れてきており、インテルとしても自社の競争優位性がある分野に徐々に事業領域を狭めていくものと思われます。(特に製造分野等)
<理論株価>98.65ドル(2021年12月26日時点)
※1 直近3年間のフリーキャッシュフローの平均が今後半永久的に2%(米国の平均インフレ率)ずつ成長していくと仮定し、Discounted Cash Flow(DCF)法で計算。
※2 DCF法の概要は
こちらご参照。
NYダウ銘柄理論株価一覧は
こちらご参照ください!
<セグメント毎ビジネスモデル>・まず、半導体は大きく以下のように分類できます。

出典:群馬大学 https://kobaweb.ei.st.gunma-u.ac.jp/news/pdf/2018/2018-10-16nakatani.pdf
・上記のSoC (System on a Chip)は、一つのLSIチップ上に、各種デジタル回路、メモリ回路、アナログ回路およびソフトウェアが混載された半導体です。

出典:群馬大学 https://kobaweb.ei.st.gunma-u.ac.jp/news/pdf/2018/2018-10-16nakatani.pdf
・メモリICはロジックICに比べて技術難易度が低く低付加価値といわれ、サムスンや東芝などの日韓勢が強いです。
・より高付加価値のロジックICやSoCにおいて、PCやデータセンター向けはインテル、スマホ向けは米クアルコム、画像処理・AI向けは米エヌビディアが強いです。一方、以下の通りインテルとクアルコム・エヌビディアなどは以下の通りビジネスモデルが異なります。

出典:群馬大学 https://kobaweb.ei.st.gunma-u.ac.jp/news/pdf/2018/2018-10-16nakatani.pdf
・半導体企業として英ARMは有名ですが、自社技術のライセンス販売に特化しております。低消費電力のCPU(中央演算回路)が売りでCPU分野ではインテルと並ぶ二大巨頭でインテルがPC向けCPUで8割のシェアを持つといわれるのに対し、スマホのCPUの9割はARMといわれてます。
・このようにインテルの主力製品であるマイクロプロセッサーはコンピューターの中核を担う司令塔の役割を果たします。現代のコンピューターは、プログラムに書かれている手順に従って忠実に動作します。プログラムは、マイクロプロセッサーが理解できる命令が多数並べられたもので、計算対象となるデータとともにメインメモリーに記憶されています。コンピューターは、メインメモリーに格納されたプログラムから命令を 1個ずつ取り出し、マイクロプロセッサー内部に送り込んで実行していきます。マイクロプロセッサーが命令を実行する手順は、大きく分けて以下の 4つの基本工程から成り立っています。
フェッチ:メインメモリーから命令を取り出す
デコード:取り出した命令の具体的な指示内容を解読する
実行:計算対象となるデータをメインメモリーから読み出し、命令の指示内容に従って計算処理を行う
ライトバック:計算結果をメインメモリーに書き戻す
・マイクロプロセッサーは、これらの工程を何度も繰り返すことで、複数の命令を次々と実行していきます。
・マイクロプロセッサーの役割がざっくりわかったところで、以下インテル社のビジネスセグメントを見ていきましょう。
1. Client Computing Group
主にPC向けのプロセッサー(インテル Core iシリーズ等が有名)の販売。(この分野はインテルと米AMDの2社でほぼ独占。インテルがシェア80%を占める)
2. Data Center Group
データセンター向けプロセッサー(Xceonシリーズ等)や高性能メモリ(Optane等)
3. Internet of Things Group
IoT化を志向する工場や病院、エネルギー企業等向けへのプロセッサーやワイヤレス関連半導体などの販売。
4. Non-Volatile Memory Solutions Group
Optaneや3D NANDなどの半導体メモリの販売。
5. Programmable Solutions Group
FPGA(Field Programmable Gate Arrayの略で、ユーザーが半導体ICの入手後、開発現場で書き換えることができるもの)の販売。
<決算情報>・売上は79,024百万ドルと前年対比1.5%増加。
Client Computing Groupは1%増収、引き続きノートPC・デスクトップPCの力強い需要が主因で、単価下落が一部相殺。
Data Center Groupは1%減収。競争激化に伴う単価下落が主因。
Internet of Things Groupは33%増収、 Mobileyeは43%増収。コロナ禍からの需要回復が主因。
Non-Volatile Memory Solutions Groupは需要の後退と単価下落が主因で減収。
その他は、顧客への供給契約の前払い金を売り上げとして計上したことで$584 million増収。
・純利益は19,868百万ドルで前年対比-4.9%減少、PC及びデータセンター向けプロセッサーに関する研究開発費が増えたこと、従業員へのインセンティブ費用が増加したこと、VLSI Technologyに関する訴訟コストを計上したことが主因。これらを、子会社の評価額増価に伴う評価益計上と、昨年中国のメモリー事業売却に伴い税負担が増加していたのが普通に戻ったことで昨年対比での税負担が軽減したことが一部相殺。
<財務情報>









以上
りろんかぶお
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