
長期投資する上で、投資対象企業がいかほどの競争優位性を有しているか、というのは非常に重要です。
なぜなら、資本主義社会において企業は市場を通じて常に競合他社との競争にさらされているからです。
今後10年、30年と、他社との競争を勝ち抜いていける確かな根拠(競争優位性)を持った企業に投資することが、成功の条件であることは間違いありません。
それでは競争優位性とは何なのでしょうか?
それは消費者が他の商品ではなく自社商品を選ぶ「理由」が、長期的に見ても他社にはまねできなそうなものかどうか、という点に集約されそうです。
自社商品が選ばれる理由が安さであったとしたら、それは他の誰かがもっと利益を削って更に安い価格を提示できそうです。
では技術面での差別化はどうでしょうか?
これだけ科学技術が発展し、情報と人材の流動性が高まった現代において、今後何十年も誰にもまねできない技術というのはほぼ皆無でしょう。
では、長期的に見て他社にまねできなそうな競争優位性とは何でしょうか?
ここでは、NYダウ30銘柄を中心に企業の定性評価をし続けてきて、筆者自身が感じた以下4つの競争優位性を記載してみます。
1. 強固なブランド(P&G、Nike等)※Wikipediaでのブランドの説明は以下
QTE
ブランドとは、ある財・サービスを、他の同カテゴリーの財やサービスと区別するためのあらゆる概念。当該財サービスと消費者の接触点で接する当該財サービスのあらゆる角度からの情報と、それらを伝達するメディア特性、消費者の経験、意思思想なども加味され、結果として消費者の中で当該財サービスに対して出来上がるイメージ総体。
UNQTE
ブランドに関しては、いくつかのとらえ方ができると思いますが、ここでは2つの具体例を挙げてみます。
① イメージの刷り込み例えば、PCや洗濯機、テレビなどの電気製品の多くは性能や質を定量化できるため、比較が簡単で優劣が明確になってしまいます。
一方、洗剤、シャンプー、消臭剤などは質を定量化することが困難です。
性能や質を定量化できない商品の場合、消費者の判断基準として「みんなが使っているもの」が浮上します。
質がいいものは多くの人が使っている、つまりみんなが使っているものは質もいい、という考えです。
では、みんなが使っているものとは何か、というのはその商品名に触れた回数の多さで決まることが多いのです。
つまり、大量のCMなどで何度も何度も商品名を消費者の頭に刷り込めば、多くの人にとって、その商品が一般的に使われているもの、みんなに使われているものというイメージを作り出すことができます。
そしてそのイメージが実際に商品を買う時の強力な判断基準となるのです。
そして、一度このようなイメージをつくってしまえば、それを大事に育てていけばそれ自体が強力な競争優勢になることでしょう。
例えばP&Gや花王などの生活必需品を扱っている企業はこの戦略を使っていて、実際に皆さんの多くが、商品選びで迷った時にこれらの企業の商品を自然と選んでしまっていると思われます。
② 信仰商品自体やメーカー自体が、「好き」であれば、そもそも他社の商品を買おうとは思いません。
これはファッションブランドに多いと思います。
服や靴、時計などの身に着けるアイテムは、自分を表現する手段でもあり、このアイテムを身に着けることで他の人にこう思ってもらいたい、というのが重要になってきます。
男性であればかっこいいと思ってもらいたいし、女性であればかわいい・きれいと思ってもらいたいはずです。
では、「かっこいい」「かわいい」「きれい」の基準は何か?
商品自体のクオリティはどこも似たり寄ったり(デザインはマネできてしまうので)だとすれば、多くの人は、かっこいい人が身に着けているものはかっこよく見えるし、かわいい人が身に着けているものはかわいく見えてくるものです。
よって、雑誌などで、有名俳優が身に着けているアイテムというのは、それを見た人の心の中に「かっこいい」「かわいい」「きれい」というイメージが形成されてきて、このイメージが商品を購入するときの判断基準になっていきます。
例えば、私はナイキが大好きです。スニーカーやスポーツウェアを買うときは大抵ナイキです。
なぜ大好きかといえば、靴のデザインというよりも、ナイキのロゴ自体をかっこいいと思っているからです。
では自分の中で「ナイキはかっこいい」というのがどのように形成されていったのか?
自分はスポーツ観戦が大好きです。その時に見るスポーツ界のスーパースター達(たとえばバスケのレブロンジェームズ、サッカーのメッシ、テニスのフェデラー等)の多くはナイキのロゴを身に着けています。
それを目にする機会が増えれば増える程、自分の中で「ナイキはかっこいい」という感情が形成されていき、この感情が自分自身が商品を買う時に重要な役割を果たしているのです。
2. みんなが使っている(Facebook、Visa、Microsoft等)商品やサービスの中には、多くの人が使えば使うほど利便性が増すものがあります。
これらの商品やサービスは、多くの人が使っているから選ばれる、すると更に多くの人が使うことになるので、更に多くの人に選ばれる、という正の自動ループに入り、他社のサービスを全く寄せ付けないようになります。
一般的にはプラットフォーマーと呼ばれるような企業ですね。
例えば、FacebookやTwitterのように友達や多くの人とつながるSNSアプリでいうと、何のアプリを使うか選ぶ時に当然、「みんなが使っているもの」である必要があるのです。みんなが使っていないと「つながる」という目的を達成できないからです。
よって、このようなアプリの場合、みんなが使っていないと選ばれない、選ばれないとみんなが使えない、というように「みんなが使う」と「選ばれる」が鶏と卵の関係になっているので、新規参入企業がシェアを獲得していくのは非常に困難です。
また、クレジットカードのVisaやマスターカードなども、世界中どこでも使えるからみんなに選ばれるわけです。
みんなに使われていなければ加盟店を増やすことはできず世界中どこでも使えるようになりません。
つまりこれも、「みんなが使う」と「世界中どこでも使える」は鶏と卵の関係になっていて、もはやクレジットカード業界での新規参入は難しそうです。
もう一つ例を挙げると、マイクロソフトのWord、Excel、PowerPointなどのOfficeアプリは市場を完全に牛耳っています。
多くの企業は業務を行う上で、Microsoft Officeを使用しており、これらのアプリは既に業務プロセスに完全に溶け込んでしまっています。「エクセルを止めれば世界が止まる」とも言われたりしますね。
業務プロセスに完全に組み込まれてしまっているということは、互換性の観点でみんなが同じものを使っている必要性があります。もっと言えば、社外にも共有される可能性のあるものなので、この点でもみんなが使っているものを選ぶのが最も便利であり、自分だけ全く違うアプリを使っていたらとても不便なのです。
このように、「みんなが使っている」ということ自体が、選ばれる理由になると、そもそもその業界が亡くならない限り競争優位性を発揮し続ける可能性が高いです。
3. 重厚長大産業における実績(Boeing、GE等)航空機や発電所、製油所などは、超巨額で、長期に渡って使用され、人の安全性にも深く関わるものなので、とにかく不良品があってはなりません。
失敗が許されないものを作ったり使う時、人々は十分な実績がある企業のモノを選ばざるを得なくなります。
よってこのような分野では、実績がないと受注できない、但し受注できなければ実績が作れない、つまり「実績」と「受注」が鶏と卵の関係になっており、新規参入が非常に困難です。
例えば、大型航空機におけるBoeingや、航空機の心臓ともいえる航空機エンジンのGEなどが挙げられます。
4. 巨大インフラ(AT&T、Verizon、American States Waterなど)鉄道や水道、通信等、巨大なインフラが必要な分野では、新規参入が困難で、既にその分野で活躍している企業は競争にさらされにくいといえます。
このような分野でサービス提供のためには、超巨額の資金を調達し、巨大な設備を造ることでようやくスタートラインに立ち、そこから既存のプレイヤーと競争を始めなければなりません。
スタートラインに立つだけでも莫大なリスクを背負い、勝てるかわからない競争をしようとする人がいるでしょうか?
そもそも、そのような巨大なリスクがあるからこそ、鉄道や水道、通信等は当初国家主導で行われてきた公共事業だったのです。
民間企業が一から立ち向かえる分野とは言いにくいですし、それは10年後も30年後も変わらないでしょう。
STOP
いつもありがとうございます。参考になったと思って頂けた方は応援ボタンを押して頂けますと励みになります。
にほんブログ村以上
りろんかぶお
※当ブログで紹介する理論株価は、いくつかの前提条件をりろんかぶおが独自に設定している為、その前提条件次第では計算結果が異なってきます。また当ブログは、投資に関する情報を掲載していますが、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。また、読者が当ブログの情報を用いて行う投資判断の一切について責任を負うものではありません。