
資本主義というのは、無限に人間の欲望を拡大させ、限りある地球資源を無限に消費していくものだと思われてきました。
経済成長を目指すということは、資源消費を増やすことと同義であり(実際にはサービスも含まれますが)、現在のシステムを続ける以上、資源の消費は増え続けるものと思われています。
そこに反論を示したのが、今年9月に日本で発売された「More from less」
この本では、
経済が成長しても資源は枯渇しない。
大量消費の資本主義は終わり、先進国の資源消費量はピークを越えた。
技術の進歩は、経済の繁栄と脱物質化を両立させる
というような内容が紹介されています。
資本主義、技術革新、政府、人民の自覚の4つが揃えば、世界は資源問題やあらゆる環境問題にうまく対処していけるだろうと説明するのです。
本の中では、米国の実質GDP(つまり消費)が長期にわたって順調に成長してきたのに対し、エネルギー消費量、金属消費量、建築材消費量などが2000年以降にピークに達し、近年では減少傾向にあるという衝撃の事実を紹介しております。
つまり、技術革新により、我々は少量の資源からより多くのモノを作れるようになったことを示しているのです。
言い方を変えれば、生産性の向上ペースが、消費の増加ペースを上回ったと言えます。
そしてこの技術革新には資本主義という競争社会が原動力になっているのです。
つまり、環境問題や資源問題を語るときに、必ずといっていいほど資本主義が悪者にされてきましたが、これらの問題を解決する上で資本主義はなくてはならない、と説明するあたりが今までと異なる面白いポイントです。
今回は、本書で語る脱物質化が日本でも起こっているのかを調べてみました。
1.実質GDP
出典:世界経済のネタ帳
日本の実質GDPはバブル崩壊以降、長期停滞しているイメージですが、緩やかではあるものの、上昇基調にあることがわかります。
つまり消費は緩やかに増えている。
普通に考えれば、消費が増えているということは、投入されるエネルギーや資源の量も増えていくことが予想されますがどうでしょうか?
2.国内最終エネルギー消費量
出典:エネルギー白書2020
最終エネルギー消費量ですが、実は2000~2005年あたりにピークを付け、それ以降減少傾向にあります。
これは、LEDやハイブリッド車、高効率家電など、省エネ技術の進歩などによるエネルギー効率改善が急速に進んだ結果といえます。
3.金属消費量
出典:日本鉄鋼連盟

出典:JOGMEC

出典:JOGMEC

出典:日本アルミニウム協会
金属消費量に関して言うと、銅や鉛の消費量に関して言うと明確な現象トレンドは確認できないものの、増加しているとも言えない状況。
普通鋼材やアルミに関して言うと、明確に減少トレンドが確認できます。
4.温室効果ガス排出量
出典:環境省
次に温室効果ガス排出量に関してですが、これも2013年をピークに減少傾向にあります。
近年、地球温暖化が世界的な問題と認識されており、それに伴い、課題解決のためのスタートアップ企業が続々と出てきて、それらの企業に資本が集まるという構図が生まれているため、技術革新に拍車がかかっている言えます。
この地球温暖化問題をドライバーとして、技術革新がおこりエネルギー消費量が減少しているということも言えるかもしれません。
5.まとめ上記で見てきた通り、日本では実質GDPが緩やかな上昇傾向にある中、エネルギー消費量、金属消費量などは減少傾向にあることが見て取れ、More from lessで謡われているように日本でも脱物質化が進行していることが確認できました。
更に、2020年は世界的な新型コロナ蔓延に伴い、急速なデジタル化(リモートワーク、ビデオ会議)がおこり、今後もこのような習慣が定着すると、人々の移動は大幅に減少し、作業は効率化すると思われます。
これを期に、エネルギー消費量のさらなる低下、温室効果ガス排出量のさらなる低下が見込めると思われます。
但し忘れてはならないのは、これはあくまで日本単体で見た時の話です。
世界全体でみると、以下の通りエネルギー消費量はいまだに増加傾向にあります。

出典:エネルギー白書2020
これは、発展途上国や新興国では、まさに急速な経済成長の最中にあり、人々の消費の拡大ペースが、生産性の向上ペースをまだまだ上回っているからといえます。
このように、先進国でいくら頑張っても新興国が急速に伸びてきてしまうと、結局全体でみると環境問題は当分悪い方向に進んでしまうので、ここは難しい問題で、今後世界全体で解決していかねばならない問題でしょう。
以上
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